タイヨ・オノラト&ニコ・クレブス
(スイス)
スイス出身。タイヨ・オノラト&ニコ・クレブスは、20年にわたり共同制作を行ってきた。彼らの作品は、MoMA PS1(ニューヨーク)、クンストハレ・マインツ(マインツ)、Foam(アムステルダム)など、世界各地のギャラリーや文化施設で個展として紹介されてきた。2023年以降は、それぞれ個別の活動を展開している。
SEEEU 2025では、《Water Column》を発表。本作品は、2023年にEdition Patrick Frey(チューリッヒ)より出版された彼らの長期プロジェクト「Future」の最終章である。海洋科学者との協働によって制作されたこのシリーズは、科学的なイメージと想像的な介入を融合させ、サンゴ礁や深海生態系、実験的な水中風景など、印象的で思索を促すようなビジョンを提示しながら、探究心、環境の脆弱性、そして現実と虚構の境界の曖昧さについて考察する。
クラウディア・フジェッティ
(イタリア)
イタリア出身。クラウディア・フジェッティは、デジタル文化と現代写真の領域を探求するビジュアル・アーティストである。アルル、コペンハーゲン、フォト・ロンドンなどの主要なフェスティバルで作品を発表してきた。日本の視覚文化と写真に影響を受けたフジェッティは、ミニマリズムと複雑性、自然とテクノロジーの両面を受け入れるその美学にインスピレーションを得ている。これは、彼女自身の制作に深く共鳴する視点であり、そこでは自然と人工が常に対話を続けている。
SEEEU 2025では、《Metamorphosis》を発表する。本作品は、私たちが今まさに経験している変遷の時をテーマにしており、それは人間の生活だけでなく、より広い自然界にも影響を及ぼす。色彩、レイヤー、混合技法を用いて、彼女は現実と人工の間に浮遊するようなイメージを創出し、鑑賞者に自然を能動的な存在として捉えるよう促すとともに、美しさ、儚さ、喪失についての思索を誘う。
フランシスコ・ゴンサレス・カマチョ
(スペイン)
スペイン出身。フランシスコ・ゴンザレス・カマチョは、フィンランドを拠点に活動するビジュアル・アーティストである。写真とグラフィック印刷を融合させた彼の作品は、物質性、移民、風景と自己のつながりといったテーマを探求する。
SEEEU 2025では、《Reverting》を発表。本作品は、風景とイメージ制作との物質的な関係、またアイスランドにおける自然の客体化に焦点を当てている。写真と版画を素材実験を通じて融合させるこのプロジェクトは、理想化されたアイスランドの自然美のイメージを複雑にする、観光によるジェントリフィケーション、廃棄物、環境の悪化といった課題に向き合う。
タマラ・ヤネス
(スイス)
スイス出身。タマラ・ヤネスは、ベルンを拠点に活動しており、アーカイブ、著作権、そして変化を続ける視覚文化に取り組んでいる。
SEEEU 2025では、《Copyright Swap》を発表。このコンセプチュアルなプロジェクトは、ニューヨーク公共図書館のピクチャー・コレクションから自身が収集したスキャン画像をもとに制作された。Photoshopでこれらの画像をデジタル加工することで、ヤネスは著作権の境界を探り、「他者の画像が自分の創作になるのはいつか?」という問いを投げかける。著作権弁護士と協働しながら、各変更は信号機の色に例えた評価システムで検証され、「グリーンゾーン」に到達するには大幅な改変が必要であることが示される。この作品は、写真やアートにおける著作権の曖昧さを浮き彫りにしている。
タダオ・チェルン
(リトアニア)
リトアニア出身。タダオ・チェルンは、ヴィリニュスを拠点に活動するアーティストである。彼のプロジェクトは国際的に発表されており、ゴッホ美術館(アムステルダム)やサーチギャラリー(ロンドン)など著名な会場で展示されている。
SEEEU 2025 では、《Comfort Zone》を発表。本作品は、公共と私的な空間の曖昧な境界を探る概念的ドキュメンタリー写真である。ヨーロッパのビーチで被写体の知らないところから上空撮影された写真は、人々が極端に公共的な空間の中でも、個人的な儀式や習慣に没頭している映し出している。リラックスしている一方でその姿は丸出しで、親密でありながら周囲の目にさらされている──これらの写真は、自由な余暇の時間に潜む矛盾を浮き彫りにする。本作品は、デジタル監視社会の現代においてプライバシーは自らが作り出すものであると同時にそれが幻想に過ぎないことを表現している。
イーゴル・シラー(セルビア)
セルビア出身。イーゴル・シラーは、アムステルダムを拠点に活動するアーティストであり、バルカン半島で育った経験や文化的アイデンティティ、記憶に着想を得て制作を行っている。2024年には、セルビアの若手ヴィジュアルアーティストとして最優秀に選ばれ、マンゲロス賞(Mangelos Award)を受賞した。
SEEEU 2025 では、《Familiar Characters》を発表する。本作品は、セルビアで制作された写真作品で、大人になったシラー自身が頭の片隅に忘れられた子ども時代の自分を巡る旅を描く。作品の中でシラーは記憶と夢を重ね合わせながら、いつも間にか失ってしまった魔法を蘇らせようと試みている。シラーにとって、幼少期の物理的・非物理的な痕跡は、自身を形作った文化を映し出す鏡でもある。本作品は、シラー自身の個人的な歴史を映し出すと同時に、人間の本質――神聖な(内なる)場所に立ち返り、それを守り抜きたいとの願い――についても問いかけている。
クリスティーナ・ヴェルナー
(オーストリア)
ドイツ出身。クリスティーナ・ヴェルナーは、国家・民族主義、文化的記憶、アイデンティティ政治(アイデンティティーに基づく政治的運動・主張)、そして表象をテーマに活動するヴィジュアル・アーティストである。
SEEEU 2025 では、《The Horses Are Coming》を発表。本作品では、国家社会主義時代において動物が象徴する意味が政治的戦略の一部としてどのように視覚・演出的に使われていたかを考察している。鷲、獅子、馬、そして牧羊犬といった動物たちは、サード・ライヒ(第三帝国:ナチス党の支配下にあったドイツ)で『力』、『純潔』、『秩序』の象徴として用いられた——これらは今日においても同じ象徴的意味を持つ暗号的なコードとして使われているとヴェルナーは指摘する。コラージュという手法を通じ、ヴェルナーはこれらの歴史的イメージを切り取り、組み替えることで、今なお残るこれらのイデオロギー的象徴性の痕跡を可視化している。
ヴァルヴァラ・ウリク (ウクライナ)
ウクライナ出身。ヴァルヴァラ・ウーリクは、ロンドンを拠点に活動するビジュアル・アーティストであり、写真、映像、インスタレーションを通じて、ポスト・ソビエトのアイデンティティ、記憶、世代間のトラウマを探求している。
SEEEU 2025では、《Sunshine, How Are You?》を発表する。本作品は、記憶がどのように保存され、歪められ、再定義されていくのかを考察する。ソビエト連邦崩壊から5年後のウクライナ東部で生まれたウーリクは、子ども時代の喜びの瞬間と、ソビエト的価値観の残響の狭間で育った。写真を通じて、彼女は過去の断片を解体・再構築し、それらを再文脈化することで、アイデンティティ、女性性、文化的遺産を再定義する。このシリーズは、内省的な思索であると同時に、世代の肖像でもあり、世代間のトラウマに向き合いながら、ロシアの植民地主義の影からウクライナのアイデンティティを取り戻す試みでもある。
アンナ・ティハニ(ハンガリー)
ハンガリー出身。アンナ・ティハーニは、ブダペストを拠点に活動する美術写真家であり、映画的で物語性のある作品を通して、女性のアイデンティティと記憶を探求している。
SEEEU 2025 で、ティハーニは《Budapest A–Z》を発表する。本作品では、子供時代の記憶や象徴的なイメージを手がかりに、今日のヨーロッパで変わりゆく文化や人々の現実を映し出すことでブダペストの新たな姿を描き出している。また、ハンガリーで広く愛されている子供向け百科事典『Ablak-Zsiráf(窓-キリン)』から着想を得たティハーニは、人々に共通する記憶の断片と自らの記憶を重ね混ぜ合わせている。どこかで見つけた古い写真、記録資料や彼女自身の個人的な写真を使って作成されたアナログ・コラージュによってブダペストを「視覚的なアルファベット」として組み立てながら過ぎ去った時代に浮かび上がる人々の顔と物語を浮かび上がらせいてる。